くるうみ。~あなたと過ごした3日間~



あ、野島がたちあがっちゃった。


軽井沢がなんか言ってるけど、首を振って野島が先に教室を出ていこうとする。


……あ、もしかしたらチャンス!?


見渡せば教室にはあたしと軽井沢しか残らないから、教室を出たところで野島に渡せば……。


軽井沢はカバンを漁って教材を揃えてるし、今がチャンス!


あたしはランチバックを持って急いで野島の後を追っかけた。


化学実験室はあたしたち一年生が使う一階じゃなく、二年生が使う二階にある。


だから、階段を上った野島を足留めしようと一度呼んだ。


「野島!」


……だけど、野島の足は止まらない。


あれれ、聴こえなかったかな?


今度はもっと近くに行ってから、と足を早めて野島が踊場に行った時、階段の半ばを上がったあたしは息を吸ってから思いっきり大声で呼ぶ。


「野島! おおいったら、止まりなさいよ!」


だけど。


野島の歩調は一瞬緩められた。


確かに立ち止まろうとしたと思う。


けれども――。


ヤツは結局歩調を緩めず振り返りもせず、さっさと階段を上がっていったんだ。


< 146 / 305 >

この作品をシェア

pagetop