くるうみ。~あなたと過ごした3日間~








学校に行くまでの間にドキドキと心臓が壊れそうなくらいに鳴ってた。


中1以来袖を通さなかった浴衣。


借り物だけど、普段着慣れないこれに身を包むのは、きっとドレスで着飾るよりも勇気が必要なんだ。


下駄で歩くのも裾をさばきながら歩くのもぎこちなくて。


でもそれよりも戸惑ったのは、自分の心にだった。


あたし……この姿を誰かに見せたがってる?


いったい誰にだろう?


やっぱり明石先輩にかな。


この前は無視されたけど、あの後の部活ではいつも通りだったし……。


無視したのは逆光で誰か分からず目を逸らしただけとか聴いたから。


明石先輩はやっぱり優しい。


振られて悲しいし傷ついたし落ち込んだけど、だからって自分を拒否された感じはしなかった。


やっぱり素敵な人だな、と思う。


浴衣は明石先輩に見せたいんだろうな、うん。


その時なぜかあたしは無理やりそう思おうとした。


言い聞かせる、と表現してもいいかもしれない。


学校の校門では先生達が仮装大賞よろしく思い思いのの好き勝手なカッコをしてて、生徒にからかわれたりしてた。
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