くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
野島は正面玄関でスリッパから下駄に履き替えると、こちらに構わないままサッサと校舎から出る。
下駄に履き替えてんのにまるで慣れた歩き方で、浴衣の裾と慣れない履き物にもたついたあたしと大違い。
野島の歩くスピードは相当速くて、たぶん普段のあたしでも小走りでないと着いていけないのに、今はさらに苦労する。
だけどやっぱり野島があたしに合わせることはなくて、なんだか胸がチクンと痛んだ。
あの時……足を痛めたあたしに合わせて歩いてくれたのに……な。
そんなに前の事じゃないのに、まるで何ヶ月か前にあった様に遠く感じる。
野島が校門の受け付けで外出許可証を貰ってるのを見たけど、あたしが追いつく手前でまた歩き出した。
「野島、野島勇人! 待ちなさいよ! パートナーを置いてきぼりにする気なの!?」
呼んでみても決して振り向かない。
ムカつきながら市道を歩いてると、途中でばったりと意外な人に会った。
なぜか勇ましい法被姿で頭に鉢巻まで巻いてるその人は、明石先輩のたぶんカノジョの川瀬美紀さん。
相変わらずしっかりと一眼レフを首から下げてカメラの道具を装備してたし。