くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「あら、瑠璃ちゃん久しぶり! バッチリ浴衣なんか着込んじゃって……あなた達も神社の龍神祭に行くのね?」


「え、龍神祭?」


美紀さんに言われて思い出した。そういえば今日から龍神を祀る夏祭りが始まるんだって。


くるうみの日まで十日間続く地元屈指の大イベント。

神社では夜店が出るふつうの夏祭りもあるけど、地元総出での御輿で練り歩くパレードがクライマックスである。


地区ごとに毎年手作りの御神輿を造り上げてそれを担いで山潮の隅から隅まで練り歩く。


御神輿の担ぎ手は無病息災を約束されるし、観光の目玉だから競争率は高い。

お父さんも毎年希望してたんだけど落ちてばかり、今年こそ選ばれるかな……。


「あら、あの時のカレね。野島勇人くんだったわね? ちょうど良かったわ。龍神祭の取材するから付き合ってくれない?被写体としてやっぱり若い男女が華を添えるのは確かだから」


美紀さんはガシッと野島の手首を掴んで引き込んだ。


美紀さん、ナイス!


あたしは心の中で喝采を送った。


「だけど6時には学校に戻らなきゃいけないんですけど」
あたしが前夜祭の事を話したら、美紀さんも興味が湧いたみたい。


「へえ、興味深いわね。後で許可を頂いて取材するわね」
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