くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
~龍神祭2
祭り囃子が遠くなる……。
歪んで霞む景色。
なぜ、こんなにもあたしは野島に……。
「わかったわ、それじゃあアルバイト代で3万出すわ」
空白の中に美紀さんの言葉が滑り込んできた。
……え?
美紀さんはいったいどういうつもりなのかわからないけど、あたしがこんな状態なのに何を言うのかと腹が立った。
涙を拭わずに見れば、ぼんやりと映る美紀さんの口元が少し悪戯っぽい笑みを湛えていた。
「3万じゃ不満かしら? もちろん折半じゃなくひとりあたまの金額だし、他の費用は持つし、終わったらすぐアルバイト代は渡すわ。
どう、これでもダメ?数時間でこんなに稼げるバイトはないと思うけど」
……なんかやたらとプッシュするけど、美紀さんはいったい何を言いたいんだろう?
「わかりました、やります」
野島は即座に答えた。やっぱり守銭奴だコイツ! とあたしはムカムカ来て野島を睨みつけたけど、視界の隅で美紀さんの顔が満足げに笑ったのが見えた。
「よし、山潮にいる以上あなたも山潮の男。男に二言はなし、だからね!
アルバイトを引き受けてもらう条件はたったひとつだけ。そう難しい事じゃないわよ」