くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
野島が吐いたセリフが信じられなくて、あたしはやつの顔を見てみた瞬間、ドキンと高鳴った心臓がおかしくなった。
黒縁メガネを外した野島の顔は、クラスメイトが憧れる某事務所のアイドルたちよりよほど整った顔だちで、前髪をかき上げる仕草がめちゃくちゃ決まってる。
おかっぱアタマを乱暴に崩した野島は、すごくすごくカッコいい……。
はっ! なにあたし見とれてんのよっ!
あたしが好きなのは明石先輩だけなんだから!
……失恋、しちゃったけどね。
なんか惨めな気持ちになりながら、あたしは野島が不良たちの気を集中してくれてる間にそうっとそばに近づいてく。
あと2.3メートルって時に、金髪が怒鳴る。
「ざけんなよっ! てめえ、余裕ぶっこいてんじゃねえ!!」
金髪は野島の胸ぐらを掴み、ズボンの後ろポケットから折りたたみナイフを取り出して刃をぎらつかせる。
「なんで俺らがてめえのオシャレに付き合わなきゃなんね? 立場をわきまえてねえよな、てめえはよ!」
夏だから6時過ぎでも明るいけど、今はかなり日暮れて夕陽の柔らかな光を受けた刃が鈍く光る。