くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
身体が細かく震え足が竦んで動かない……。


何か言わなくちゃと焦るのに、喉から肺から声を出すために空気が流れない。


それはどこか切り離した世界の出来事みたいで、ガラス張りの向こう側のよう。


現実離れした出来事。


夢の中……白昼夢。


理解するのを拒んでるの?


こんなことは初めてだった。


誰にどんなショッキングな罵詈雑言を浴びせられても、あたしはこんな風にはならなかった。


涙さえ、出ない。


゛わかったわよ゛


そのひとことを言うためだけに、どうしてこんなに力が要るの?

時間がかかるの?


いつもみたいに何にも意識せず、サラッと言えば良いじゃない。


以前と同じ生活に戻るだけ……。


野島勇人がいない生活に戻るだけ。


ただ野島がいないだけ。

やつがいなくったって、あたしは笑ってたし、怒ったし、泣いたりした。


美味しい食べ物と、家族と、友達さえいれば幸せで、大それた望みは何も抱かなくて。


今年の夏は海で泳ごうか、水着新調するなら痩せなくちゃ、と悩んでいれば良かったんだ。


それが当たり前でふつうだったんだ。
< 185 / 305 >

この作品をシェア

pagetop