くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「俺と瑠璃香は確かに他人だよ。だけど……」


野島はあたしから離れてしゃがみ込むと、道端に旺盛に生えてる名も無き雑草と紫露草を指さす。


「この花が瑠璃香、草が俺。 このまま生えてれば一生交わらないけど……」


野島はそれを摘むと、紫露草に草を結んで手のひらに載せてあたしに見せた。


「こうすれば触れ合える……知ることができる。
他人ってのはそんなものじゃないか?
恋人だって他人から始まり、それが結構して夫婦になれば2人の血を引く子どもが生まれる。
考えてみれば不思議だよな。
同じ学校や職場を選ばなきゃ、近所に住まなきゃ、同じ趣味を持たなきゃ、同じ道を通らなきゃ……きっかけは何にしても、偶然が重ならなきゃ知り合えもしない。
日本でさえ1億2000万人の人間がいるのに、その1億2000万分の1の確率で出逢うんだから。
どんな関係だって、血が繋がらなきゃ出発点は他人だ。
俺は、瑠璃香と知り合えて良かったと思う。
鈴本家に居られて幸せだし、この山潮が大好きになれた。
故郷なんて知らないけど、たぶん今の俺の故郷はこの山潮なんだ。
それぐらい自然に好きになってた」
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