くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「俺、鈴本家の人たちが好きだよ。温かいし優しいし、本当の家族みたいに扱ってくれる。
だけど……心のどこかでは所詮他人じゃないかって思いがあった。
親切にされればされるほど心苦しくて、できたら鈴本家の子どもに生まれたかった。
でも、今は違う」
野島は手にした紫露草をあたしの髪に挿した。
「俺……瑠璃香と本当の家族になりたいんだ」
「え……?」
あたしが見上げれば、野島は言ってからなぜか困惑した顔になった。
あたしからまた目を逸らし、前髪に手を当ててそれを軽く握りしめてた。
「……野島?」
意味が解らなくて戸惑ったまま呼べば、野島は何かに耐えるような顔つきになって、額にやった右手を左手で握りしめてた。
「わり……変な事言っちまった」
変……?
変なんかじゃない。
野島本人の口からそれを言われても、あたしはもう揺らがないでおこうと思った。
なぜなら……
あのひとことが野島の想いの全てだ、とあたしの中でしっかりと理解できたから。
野島はよくふざけた事を言うけど、歯が浮く台詞はあまり言わない。