くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
表面では明るくて陽気でいるけど、その芯は実直で誠実な人間だ、って一緒に暮らすうちに解ってきてた。


野島と暮らしてまだ半月も経たないけど、あたしは……。


あたしは野島を誰よりも理解しようとしてた。


気がつかなかった……。


あたしの目はいつの間にか明石先輩じゃなくって、野島を追うようになっていたんだ。


野島の本心が剥き出しになる事はめったになくて、あたしでさえ彼の心に触れた事はない。


その口から飛び出す言葉は多いけど、たぶん野島は100分の1も胸の内を晒してない。


そんな彼があたしに殻から飛び出して胸中を晒した。


仕草や表情の作り方、声のトーンや抑揚の付け方。


みんな、みんな普段と違ってる。


あたしには、わかるよ。


あたしは野島の手を取って、自分の手のひらで包み込んだ。


……やっぱり、指先が微かに冷たい。


緊張してるんだね、野島……。


微かに汗ばむ手のひらも、落ち着きない視線も、ぜんぶあたしに教えてくれた。


「……変じゃないよ。人が人を求め合うのは自然なんだって曾おばあちゃんが教えてくれたもん」
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