くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
朝顔柄の水風船を狙った勇人の釣り針がすんでのところでかすり、飛んだ水しぶきで濡れた紙こよりが溶けて切れた。


「あ~~惜しい!」


「ちくしょ、もうちっとなのになあ」


勇人が本気で悔しがってるのは、もう3本目になる紙こよりをもらってるからわかる。


こんなコトにむきになる男の子って、なんかかわいいや。


「もう少し引くタイミングを遅くしたら? 早いから十分輪っかが引っかからないと思うんだけど」


あたしが思いついた事をアドバイスしたんだけど、意地になってる勇人は耳を貸してくれないし。


「よっし! 今度こそ」


引っ張ってこよりの強度を確かめた勇人は、狙いすませて朝顔柄の水風船を待つ。


「見てろよ、野島 勇人様の華麗な釣り針さばきを」


釣り針さばきって、あんまりカッコ良くないかも。


というツッコミは心の中だけにする。さっき話しかけたら八つ当たりされたもん。


「よ~~し、よし。こっちゃこい!」


水風船に向かって話しかけても動くわけじゃないのにね。


だけど、確かに勇人は言うだけのことはあった。


次に釣り針を動かした時、確かに朝顔の水風船を釣り上げたから。
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