くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
露店がある道だと落ち着かないから、神社の境内にお邪魔しました。
ちなみに美紀さんは30分ばかりお神輿の写真を撮りに行くってついてこなかった。
鳥居をくぐり抜けて狛犬がある道から外れた、拝殿の脇にあるちょっとした林の中。
どっしりとして枝ぶりも立派な木が生えてる間を抜けると、小さな池のそばにいろんな形の岩がある。
もともとここにあったのか人の手で据えられたものか知らないけど、小さな頃はよくこの上で遊んだな。
お弁当を黙々と食べてくれる勇人の横に腰かけながら、そんな思い出話をしてみた。
「ねえ、勇人はどんな思い出があるの? 夏休みは少なくとも何かあるでしょ」
あたしが話し終えた後、勇人に訊いてみた。
彼は確か小さい頃に親を亡くして親戚でいびられてたみたいだけど、それでも大切な思い出はひとつくらいあるよね。
口に入れかけた卵焼きをお弁当箱に置いた勇人はそれをジッと見たままこう答えた。
「……まあ、あるっちゃああるな」