くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「なにせケチでは有名な一家だったからな。
5日間自由と嬉しくなったんだけど、それはぬか喜びに過ぎなくて、結局雑用や使いっぱしりの為に連れてかれた」


「え? でも泊まりがけなら宿に部屋を取ってくれたんでしょ? 子どもなら大人の半額で済むし」


もしかしたらその叔父さん達、ってのは意外に親切なのかな? と思ったけど、あたしが見た勇人の横顔は暗い笑顔だった。


「それすらケチったさ、あのケチケチ家族は……。連中は俺だけ夜に屋外に放り出したまま。
夏だから凍死する心配がない……ってさ。
もちろん飯なんぞくれやしない。
でも、俺はそれで良かった。
夜の間だけ近くの川で泳いだり、森に入ってクワガタを採ったり。
ご飯は気の毒に思ったか、近くにいた知らないおばあちゃんにもらえた。
夜から朝まで自由で、一度だけおばあちゃん家に泊まらせてもらってスイカを食べたり、蚊帳に入らせてもらったり、花火をしたり……本当に愉しかったな」


そう話す勇人の笑顔が優しくなったから、あたしも嬉しくなった。
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