くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「へえ、よかったね。そんな親切なおばあちゃんに出会えて」
あたしが嬉しさを隠さずに言うと、勇人もあたしを見て頷いた。
「そうなんだ。おばあちゃんの出身は山潮だって言ってたから、こんな温かい人がいる山潮ってどんな町かなって思うようになったんだ」
「へえ、山潮の人だったんだ。どんな名前の人?」
もしかして知ってる人かな? と僅かばかりの期待を持ってあたしが訊いてみると、野島はなぜか膝に載せた弁当箱を脇に退けて立ち上がった。
「……すごい夕日だな」
勇人が背伸びをしながら空を振り仰いだからあたしもつられて見れば、濃紺に金色や茜色や薄紫色が溶け合って微妙な色彩を生み出してた。
「本当だ、きれい」
見とれてるあたしの手を勇人はいきなりつかみ、早足で神社の奥へ奥へと進んだ。
「ちょっと、いきなり引っ張らないで!」
あたしの抗議などどこ吹く風で、勇人は黙々と歩きながら障害物には注意してくれた。