くるうみ。~あなたと過ごした3日間~



林を抜けてちょっと傾斜がある地面を下ってくと、思いもよらず美しい景色に出逢えた。


紫紺色の空に木々のシルエットが浮かぶ中、ふわりと灯る金緑色の光。


――ホタルだった。


無数の光がチカチカと瞬きながら、ふわりふわりと飛んでゆく。


その幻想的な光景にしばらく言葉を忘れて見入った。


「綺麗だろ? これを瑠璃香に見せたかった。
山潮には去年の夏に一度来たんだけど、その時に見つけたんだ。
まあ誰か知ってるかもしれないけど、とりあえず俺の秘密の場所。
だけど、これからは……」


勇人はあたしの手をぎゅっと握りしめた。


「おまえと俺だけの秘密の場所だな」


ホタルの照り返しで無邪気な笑顔が見えた瞬間、胸がキュンと鳴った。


……嬉しい。


ここは、あたしと勇人だけの秘密なんだ。


なんだかジンとして涙が出そうだったけど、勇人がポツリと口に出した言葉に耳を疑った。


「……実は俺……2年間入院してたことがあるんだ。
だから、本当なら学年は2つ上のはずなんだけど、休学した分2年遅れてんだよな」
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