くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
……え?
勇人が2年も入院してたなんて。
本来ならスポーツも勉強も万能でこんながっしりした身体だから、健康以外の何もないと信じて疑わなかったけど。
「え、どうして? 何で入院したの」
あたしが不安を隠しながら訊くと、勇人はさほど大した事でもなさそうに淡々と答える。
「さあ? 原因はわからなかったけど、中学に入ってすぐだったな。
原因不明の高熱と痙攣と意識喪失……2年の間殆どそんな状態で寝たきりだった。
俺はあまり記憶にないけど、衰弱が激しくて何度も死線をさまよったそうだ。
こんな状態だから入院費なんぞ出せるか、と叔父さん達は俺を見放して、親戚中の誰もが俺の面倒を見たがらなかった。
だから、民生委員さんが来てお役所の出番になって……結局はなんとか孤児とやらで退院後はそれ関係の施設に入ったんだ。
だけど、悪くはなかったよ。
境遇からひねくれたやつはいたけど、悪意のいるやつは少なかったし、みんな俺をひとりの人間として見てくれた。
親切だし愉しかったな」