くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
美紀さんが間に立ってくれたのをこれ幸いと、あたしは彼女に同意を求めた。


「だって美紀さん、『馬子にも衣装』なんてふつう女の子のほめ言葉に使います? 信じらんないでしょう!」


「だ、だからあ! 意味間違って覚えただけだっつの!」


野島はバカさを丸出しにしたからか、劣勢なまま弱々しい反論を繰り返す。


だけど、あたしは容赦するつもりはなかった。


悪意はないとはいえ、生まれて初めて同年代の異性から「かわいい」と褒められた嬉しさは、勘違いの結果とわかって余計に腹が立つから。


むしろ歯が浮くセリフをわざとらしいとわかっていても受けた方がマシだった。


別にデートのつもりなんか毛頭もなかったけど、一生懸命におしゃれしてみた自分がバカみたいで、似合わない事はするもんじゃないと美紀さんを見て思う。


やっぱりおしゃれっていうのは、美紀さんみたいにスタイルがよくて美人でないと似合わないんだ。


あたしがいくら着飾ったところで、きっとシャツとジーンズにスニーカーっていうラフな格好の美紀さんにはかなわない。


馬子にも衣装ってのはどんな容姿の人でも着飾れば立派に見える意味だけど、あたしにはそれさえ当てはまらないんだ。
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