くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「瑠璃ちゃんの知り合いけ?なら、ぜひ上がってお茶でも飲んでいきな」


キミコおばちゃんはそれだけじゃなく、あたしたち4人を店内から家に通じる奥へ招き入れ、居間のちゃぶ台に座らせるとばたばたと台所に走る。


「ばあちゃ、お客だでミソ出してな!」


「あらぁ、お客かね。なら、ミソだけじゃなか、グジも出すべ」


ちなみに、山潮の言葉でミソっていうのはおみそ汁に使う味噌じゃなく、各家庭で手作りしたお菓子のこと。

グジっていうのは果物を加工した保存食で、山潮の伝統のお菓子にも使われる。


昔から山潮では祝い事があると出されたくらい身近な食材なんだよね。


「すごい、ここの人ってこんなにフレンドリーなのね。それに、この独特の建築構造……梁や柱が殆どないのね。興味深いわ」


美紀さんは肩に下げたバッグを開けて、取り出したのは有名メーカー製のデジタル一眼レフカメラ。


どうりで大きいカバンだと思えば……。


「すみません、ちょっと写真を撮らせていただきたいのですが」


美紀さんが声を掛けると、キミコおばちゃんもお婆さんも頬を染めて
「あらいやだわぁ……家の中ならいくらでもいいけ、私らはやめとくれよぅ」
と言いながら、せっせと手を動かしてた。
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