くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
美紀さんは慣れた手つきでたくさんあるレンズを選び交換すると、露出を測ってから室内から写し始める。
「先輩、美紀さんってプロのカメラマンなんですか?」
気になって訊ねてみると、明石先輩はなぜか驚いた顔をしてあたしを見た。
「……あ、ああ。違うよ。美紀はカメラマンというよりフリーのライターなんだ。カメラはもともと趣味だったから、取材先でも全部ひとりでこなしてしまうんだ」
……取材?
ならもしかしたら、とあたしは微かな希望を見いだした。
「美紀さん……は……そのう……こちらには取材で?」
あたしがおずおずと訊いて先輩が答えてくれる直前、パッとフラッシュが焚かれて眩しさに目が眩んだ。
「そ、山潮には『くるうみ』の取材で来たんだ。これから1ヶ月間透の家に泊まり込んでみっちり取材よ! もちろんそれ以外にもネタを捜すつもりだから、何か珍しいことがあれば教えてね」
訊かなきゃよかった……。
1ヶ月も先輩のお家に泊まり込むんだ。
それはとりもなおさず、美紀さんは少なくとも先輩の家族には認められて親しくしている、という絶望的な現実を突きつけられただけ。