くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「あなたたち、いきなり立ったまま気を失ったのかぼんやりとして虚ろな目で……いったいどうしたかと焦ったわよ。
しかも2人同時にでしょう?
あたしの焚いたフラッシュに過剰反応したかと思っちゃって」


美紀さんがホッと安堵したように言う。


「声をかけたり体に触れても何にも反応がないから……ちょっと手荒でごめんなさいね」


「いえ、ありがとう……ございました」


あたしは腑に落ちないままちゃぶ台に座り直そうとする前に木彫りの龍を見上げたけど、それはもう光ってなかったし、胸のペンダントも温かさを失ってた。





「なんが神女(かみおんな)の憑き方に似てるべな」


グジとお茶をお盆に載せて持ってきたお婆さんがそう言った。


「え、神女って何ですか?」


ジャーナリストらしく、好奇心で目を輝かせた美紀さんがメモとICレコーダーをカバンから取り出した。


「神女ってのはな、神の女って意味そのまんまさぁ。昔は○○の娘や妻って意味でも女って書いてむすめとか読んだけんね。
昔は山潮の女はみんな神女じゃったけ。
くるうみが来る前は、みぃんな一度は神憑りおってなあ……。
くるうみが来れば梅雨も明けるじゃろ。そうなれば神憑りは不思議といなくなっての。
そうなれば皆は梅雨明けを“龍が去る”と言ったもんじゃ」
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