くるうみ。~あなたと過ごした3日間~



「こういうのはな、勘で選ぶのが一番いいんだぜ」


そう言って野島はパワーストーンの展示箱に手を遣ると、そのまんまガシッと鷲掴みにしてからすぐに引いた。


「鈴本が決められないなら、俺が選んでやった」


「え~? 何よそれ、意味わかんない」


勘で選ぶったって、自分でやらなきゃ意味がないんじゃないの?


あたしの疑問を無視した野島は、「ほらよ」とこちらに手を伸ばしたから、あたしは渋々と手を差し出した。


野島から何かを受け取るなんて、嫌と言うよりもこそばゆくて恥ずかしい。


あたしがすっかり手の平を開いたからか、野島の握りしめられた手のひらがぱっと開いて……。


重ねた両手のひらに落ちてきたのは、銀色に星が輝く宝石。


――ムーンストーンだった。


「これ……あたしに?」


両手でその宝石を包んで視線を野島に向けると、なぜかヤツはぷいと顔を背けてレジへ向かった。


「すいません! ムーンストーンひとつ下さい」


「あらら、あの石買ったなんて珍しい。あんたは特別に100円でいいよ」


キミコおばちゃんにそう言われたけど、野島は定価(?)の300円をおばちゃんの手に握らせた。
< 88 / 305 >

この作品をシェア

pagetop