くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
野島は握らせた手のひらをゆっくり開き、中から出てきた石をそっと持ち上げて電球に透かして見てる。
野島が持ってたのは、淡い水色のアクアマリン。
とはいっても、特に大きくも立派でもないただのかけらに過ぎないけど、野島はずいぶん長い間それに見入ってた。
あたしはなんだか恥ずかしくなって、ヤツに止めるよう言おうとしたんだけど、野島が心から嬉しそうな笑顔になってたから、なにも言えなくなった。
「サンキュ! マジ嬉しい。生まれて初めてのプレゼントだから、ずっと大切にするな」
生まれて初めて?
野島の天真爛漫で純真な笑顔とその境遇の隔絶が結びつかなくて、あたしは野島がどうして喜ぶのか理解出来ない。
「生まれて……初めて? 冗談でしょう」
あたしをからかってるんだ、と思った。
こんな数百円の石ころひとつで大袈裟に喜ぶのも、そんな風に言うのもきっと冗談なんだって。
普通なら家族がいたなら、誕生日やなんやかんやでプレゼントのひとつは貰えたでしょう?
だけど、野島はさほど深刻そうにはならずサラリと答えてくれたけど、それはあたしの耳を疑う事実だった。