くるうみ。~あなたと過ごした3日間~








結局は野島の小物を見ることなく雑貨屋を逃げるように出てきた。


なんだか調子が狂っちゃう……。


野島といると、あたしがいつものあたしでいられなくなる。


「そろそろお昼にしない? 最近港近くで開店したイタリアンレストランが美味しいって評判なのよ」


美紀さんの誘いに誰も反対しなかったから、あたし達は一路港沿いの堤防を通ってそのお店に向かう。


そういえば、亜美がつい最近家族で食べてきて美味しかったとか聴いた気もするな……。




お店の名前は「Ci vediamo.(チ・ヴェッィアーモ)」。
イタリア語で「また会いましょう」って意味だって美紀さんが教えてくれた。


「海に接するイタリアや地中海の国々は魚介類を日本と同じくらい好むものね」


外観は白い壁と赤い屋根が特徴的で、布のひさしカラフルに染めてあり、道路に面する出入り口は赤レンガが敷き詰めて、あちこちある花壇にはセージなんかのハーブが植わってた。


「うわあ……なんだかここだけヨーロッパみたい」


あたしが感想を素直に言うと、美紀さんはにっこり笑う。


「ここのレストランは知り合いがやってるから特別席を用意してもらうし、今日はわたしのおごりだからどんどん食べてね」
< 92 / 305 >

この作品をシェア

pagetop