くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
……だけどだけど。


ほんの1センチ手前で先輩の息が微かに頬にかかって。


「きゃああっ!」


意識が現実と認識した瞬間に自分から飛び退いて、テーブルの脚に思いっきり頭をぶつけましたし。


「大丈夫かい?」


明石先輩はそんな勘違いドジ女なあたしにさえ優しいまま。


う゛わあああ、どうしようどうしよう!


あたし、先輩にキスしそうになっちゃったよお!


恥ずかしくて恥ずかしくて、もう泣きたくなってきた。


顔が赤いって解るし、もう先輩を見られないし見せられない。


穴があったら入りたいってこういう時に言うんだわ。


ぐずぐず鼻をすすってるあたしに、先輩はペーパーナプキンを差し出してくれた。


あたしは受け取れないけど、先輩は優しくこう言ってくれる。


「鈴本さん、ありがとう。でも、人を好きになることを恥じる事はないよ。好きになれば相手が欲しいと思うのは自然な心理なんだ。僕は残念ながら受けることはできないけど、僕を選んでくれて嬉しかった。ありがとう」


それを聞いて受け取ったペーパーナプキンで盛大に鼻をかんでも、先輩は微笑んで見守ってくれた。


先輩にとってあたしはあくまで後輩で、異性として意識されないんだと改めて知って悲しくなったけど、なんだかちょっとだけ元気が出た気がした。
< 97 / 305 >

この作品をシェア

pagetop