予言と未来







「ライネスお兄ちゃん、居ないなぁ。」



暫くコロシアムの中を歩き回り、リーは小さく呟いた。この広い会場で目的の人物を捜し出すのは、思ったより大変だったようだ。



諦めて、仲間達の所へ戻ろうと した時。



少し離れたトイレから、見慣れた金と黒のメッシュの髪が見えて、リーは慌てて其処へ走った。



「ライネスお兄ちゃん!」



呼び掛けると、彼は驚いたように振り返る。



「お前、何で此処に? 終わったのか?」



「うん、負けちゃった。御免なさい。」



「……何故 謝る?」



ライネスは僅かに眉を顰めて そう訊いた。



「……ライネスお兄ちゃん強いから。こんな とこで負けてばっかじゃ、僕、足手纏いだもん。」


「…………。」



ライネスは暫し沈黙した後、リーの頭を くしゃくしゃと撫でた。



「悔しかったんだろ?」


「うん。」


「なら良い。最善を尽くした証拠だ。」


「……うん!」



リーは満面の笑みを浮かべ、頷いた。

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