予言と未来



普段は不愛想な義理の兄が、時折こうして優しく慰めてくれるのが、リーは好きだ。



彼が、自分の祖父にしか心を開いていないと、解っていても。



「女の子に負けたのは悔しかった。ライネスお兄ちゃんがアイカお姉ちゃんに負けた時も、こんな気持ちだったんだね!」



「…………。」



純粋な子供の言葉は正直過ぎて、時として心を傷付ける。



思い出したくない事を言われて、ライネスは絶句した後、苦笑した。



「……そう言えば お兄ちゃん、目が少し赤いけど、何か在ったの?」



「何も。」



ライネスは気付かれないように即答する。



彼がリーと深く関わらないように しているのは、リーが試合の時 口に していた出来事の所為だ。



リーが両親を失ったのは、龍族の――自分の所為だから。



「そうなの? なら良いや。」



僅かだが共に生活したリーは、ライネスに深く追及する事は しない。







お互い、相手を理解しているようで、実は全く理解 出来ていない事等 気付かずに。







「……ウィンお姉ちゃんが戦ってるから、戻ろ?」



リーの言葉に、ライネスは頷いた。

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