予言と未来
観客席に戻ると、レイムは無言でライネスの傷付いた右手に回復(ヒール)を使い始める。
「ライネス。」
それを無表情で眺める彼に、リホが声を掛けた。
「あれ、ほんとなの?」
リホが指す“あれ”とは、ライネスが試合の時に言っていた、“殺して欲しい”と言う言葉。
「そんな事……思ってないよね?」
リホが畳み掛けるように訊くと、ライネスは小さく笑った。
「……嘘に決まってんだろ。相手を油断させようと思って、言っただけだ。」
「……嘘つき。」
リホとライネスの会話に割り込んだのは、愛光だった。
「……は?」
「あれ、本心でしょ。笑ったって、私の目は誤魔化せないし。」
「本心じゃねェって、言ってんだろ?」
「悪いけど私、人の嘘には敏感なんだよね。」
「…………。」
愛光の言葉に、今度は黙り込むライネス。
「そんな事 無いよね? 私達、仲間でしょ?」
ライネスに呼び掛けるリホの声は、微かに震えている。ライネスは愛光達から視線を外し、床を見つめるのみだ。
仲間達の間に流れる沈黙。
それを破ったのは、ライネスだった。