予言と未来







――何やってるのライネスっ!!



高く五月蝿い耳鳴りの中、高く澄んだ綺麗な声が聴こえた。


大好きな人。大切な人。



――お姉ちゃん。



――馬鹿!



姉の顔は今にも泣き出しそうで、それでも僕の背後を きっと睨み付けた。



――呼び出して早々 悪いけど、還ってくれるかしら。



それは、僕が召喚した悪魔に向けられた言葉。だけど、ヴィルと名乗った悪魔は、妖艶な笑みを浮かべた。



――誰が、てめェの言う事なんか聞くかよ。



――ライネス、こっちに!



両手を真っ直ぐに僕に向かって伸ばす、姉の姿。



……ああ、そうか。僕は まだ、独りじゃなかったんだ。



――そんな訳 在るかよ。あいつは、家族だから お前に手を差し伸べてるだけだ。他の龍族と同じ立場だったら、皆と同じように、お前を罵るさ。



聞いてはいけない、悪魔の囁き。でも、まだ子供で幼い僕は、その言葉を信じたくて堪らなくなるんだ。



――ライネスっ!!



姉は僕に向かって真っ直ぐ走って来て、その腕が、僕を包み込む。その瞬間、姉の口から、真っ赤な液体が飛び出した。



――生きて。



たった一言だけ囁いて、姉は地面に崩れ落ちる。



――さぁ、行こうぜ、ライネス。



差し伸べられた その手を、僕は どうしたんだっけ……?

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