予言と未来
☆
――何やってるのライネスっ!!
高く五月蝿い耳鳴りの中、高く澄んだ綺麗な声が聴こえた。
大好きな人。大切な人。
――お姉ちゃん。
――馬鹿!
姉の顔は今にも泣き出しそうで、それでも僕の背後を きっと睨み付けた。
――呼び出して早々 悪いけど、還ってくれるかしら。
それは、僕が召喚した悪魔に向けられた言葉。だけど、ヴィルと名乗った悪魔は、妖艶な笑みを浮かべた。
――誰が、てめェの言う事なんか聞くかよ。
――ライネス、こっちに!
両手を真っ直ぐに僕に向かって伸ばす、姉の姿。
……ああ、そうか。僕は まだ、独りじゃなかったんだ。
――そんな訳 在るかよ。あいつは、家族だから お前に手を差し伸べてるだけだ。他の龍族と同じ立場だったら、皆と同じように、お前を罵るさ。
聞いてはいけない、悪魔の囁き。でも、まだ子供で幼い僕は、その言葉を信じたくて堪らなくなるんだ。
――ライネスっ!!
姉は僕に向かって真っ直ぐ走って来て、その腕が、僕を包み込む。その瞬間、姉の口から、真っ赤な液体が飛び出した。
――生きて。
たった一言だけ囁いて、姉は地面に崩れ落ちる。
――さぁ、行こうぜ、ライネス。
差し伸べられた その手を、僕は どうしたんだっけ……?