予言と未来



それでも、止める事は出来ない。



戦う力が殆ど無いレイムの代わりに、皆は戦ってくれている。リホだって、一緒に戦いたい衝動を抑えて、女神様を召喚しようと しているのだ。



全員が全員、自分が出来る精一杯の事を しようと している。それを止める権利等、誰にも無いのだ。



「リホ、頑張って!」



思わず声を出した瞬間、リーの叫び声が聞こえて、レイムは慌てて戦いに目を向けた。地面に尻餅を付いたリーの目の前に立ち、剣を振り上げているのは。



――ライネス。
かつて、仲間だった人。



光彩の無い紅い瞳が、リーを真っ直ぐに見つめている。何処迄も涼しげな顔。



一緒に旅を していた頃の思い出なんて、忘れてしまったかのように。



「リー!」



ウィンが叫ぶが、愛光と彼女は先程もろに攻撃を受けたばかりらしく、地面に蹲っている。



リーの周りに結界を張ろうか考えて、レイムは首を横に振った。



(……駄目……。)



今、兄は、ウィロアと ほぼ互角に戦っている。もしもレイムがリーに結界を張り、リホを護っている結界が消えた時、ウィロアが襲って来たら、リホは傷付けられ、女神様の召喚は出来ないだろう。



(……でも、その為に、リーを見殺しに しろって事!?)



そんな事、出来る筈が無い。出逢って まだ少ししか経っていないが、リーも、その他の仲間も、皆 大事な人なんだ。



レイムが唇を噛んだ その時。



絶体絶命の筈のリーは、にっこりと笑った。

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