予言と未来
女神 降臨
愛光が目を閉じた瞬間。
「召喚します!」
リホの声が聴こえ、次いで、愛光の躰の上に在った体重が消えた。驚いた愛光が目を開けると、遠く離れた地面に蹲り、腹の辺りを押さえているライネスの姿が見えた。ライネスが持っていた剣は、愛光と彼の丁度 間くらいの位置に投げ出されている。
「それ以上 罪を重ねる気か、穢れた子よ。」
美しい、艶やかな声が響く。リホの斜め前に立っている その女性を見て、皆が息を飲んだ。
身長よりも長く、地面に付いている黄金の髪、同じ色の切れ長の瞳。この世のものとは思えない程 美しい顔、神々しい姿。
「……イラ、様……?」
レイムの呟きに、彼女は頷いた。
「愛光、其方、何を考えていた?」
イラの問い掛けを聞いた愛光の瞳から、涙が ぽとんと落ちた。
(……私……。)
何を考えていたんだろう。
これ以上、ライネスが苦しむ姿を見たくなくて、彼が望むように すれば良いと思って。
――良いよ。殺して。
自分を殺すよう、促した。
彼を助けようとして、間違った道を提示した……?
「彼を大事に、と言ったのに、其方は罪人どころか自分の命すら大事に出来んのか。」
女神の眉間に浮かんだ深い皺に、皆が たじろぐ。そんな事には全く気付かず、イラはライネスの方に顔を向けた。