予言と未来
「……そんな事、出来ない……。」
掠れた愛光の声は小さく、今にも消えてしまいそうだったが、その言葉は、静まり返った空間に、嫌と言う程 響いた。
「……おかしいよ、そんなの……。」
「愛光、躊躇っている場合ではない。今も、ヴィルは2界を滅ぼすべく動いておるのじゃぞ? 私が何故、混血を殺さずに生かしてやっていると思う。」
私が先程 本気を出していれば、ライネスは死んでいた。
彼女は、そう言っているようだった。
これ以上 女神と話し合っても無意味だ。そう判断した愛光は、ライネスの元へ駆け寄った。
「ライネス、ねぇ、嘘だって言ってよ!」
(……覚悟しております、なんて……。)
そんな事、言わないで。
しかしライネスは、初めて見る、穏やかな微笑で、愛光を見返した。
「……覚悟は、出来ている。」
ライネスは、いつ、何処で、この事を知ったのだろう。愛光を殺そうと したのも、全ては“自分が最も罪深き者に なる為”。
「嘘だ!!」
愛光は、ライネスの胸倉を乱暴に掴んだ。彼の傷から溢れた血が、愛光の服に跳ねる。
「好きって言ったじゃない! 好きだって言ってくれたじゃない! 一緒に生きて行けるよ! 貴方が犯した大罪を、私も一緒に背負うから! だから……っ!」
ライネスは首を横に振ると、愛光の頬に手を当てた。