予言と未来
結界が綻んでいる場所はリホが知っていると言う事で、彼女を先頭に愛光達は走り続ける。
愛光は隣を走っている龍の姫を見た。歳は同じくらいだろうか。感情が読めない顔を しているが、何となく気負っているようにも感じた。
「アリィ様、これから宜しくお願いします。」
愛光が そう言うと、アリィは驚いたように目を見開き、小さく笑った。
「呼び捨てで構いません。後、敬語も無しで。私が姫だったのは、もう10年も昔の事。今は唯の生き残りです。敬意等、要りません。」
「じゃあ、貴方も敬意は無しね。」
そう言って笑い掛けると、アリィは今度は嬉しそうに にっこり笑った。
「急に押し掛けて御免ね。早く終わらせよう。」
「うん。」
愛光とアリィの会話を聞いていた仲間達の間の、張り詰めた緊張が溶けて行く。
「ところで、アリィちゃんは水の神霊を遣うのかな?」
ルーヴの質問に、アリィは こくんと頷いた。
「私は、ご先祖様と同じ水龍(すいりゅう)だから。」
「へぇ。」
皆がアリィに笑い掛けると、彼女も可愛らしい笑顔で応えた。
(大丈夫。)
ほぼ初対面の人とでも、こうして心を開いて話せば、直ぐに仲良くなれる。戦いに大して支障は出ない筈だ。
「皆さん、もう直ぐ着きます。恐らく悪魔が居ますから、戦う覚悟を。」
リホの言葉に皆は頷き、拳を突き上げ合った。