予言と未来



「この……餓鬼がっ!」



ヴィルは痛みに顔を歪めながら、どす黒く染まった黒い靄を愛光に放つ。それは靄の筈なのに、彼女の躰を突き飛ばした。



「アイカお姉ちゃん!」



リーが伸ばした草の蔓が、愛光の躰を受け留める。お陰で、地面に激突する衝撃は避けられた。



「この世は上下社会だ! 犠牲の上で平和は保たれる。弱い奴は強い奴の為に死んで行くんだ!」


「そんな事 無いわ!」



ヴィルの言葉に反論したのは、アリィだった。



「確かに今は、平和を維持する為に、犠牲が沢山 生まれてる。でも それが無くても、平和は保てる筈だわ! 大切なのは今を保つ事じゃなくて、今を変える事よ!」


「偽善者が。世間を何も知らない姫が、必死に生きて来た奴の やり方を否定すんな!」



どうやらヴィルは、アリィが龍の姫だと解っているようだ。恐らく10年前、実験台にした龍族から、姫が封印された事を訊き出していたのだろう。



アリィは言葉を詰まらせた。



「あんたこそ、自分の正義を押し付けるな!」



ウィンが叫び、ヴィルに殴り掛かる。神速だ。



「ちょっと! 私の事 忘れないでよ!」



ヴィルを攻撃するウィンに、ウィロアが攻撃する。そして彼女をリーが攻撃する。最早 大乱闘だが、以前のように相手の攻撃が見えず、一方的に やられるような事には ならない。



2界の為に。
ライネスの為に。



戦っているからなのだろう。

< 232 / 258 >

この作品をシェア

pagetop