予言と未来
「何で あんた達みたいな幸せな餓鬼が、私達の前に立ちはだかるのよ!」
ウィロアは恐ろしい形相で、愛光に迫る。それを躱して、愛光は言い返した。
「幸せな餓鬼って何よ。あんたは自分が不幸だって思うの?」
「当たり前でしょ!」
愛光とウィロアが向き合う。
「あんた達は こんなに暖かい世界で生きてるじゃない。地界は太陽の光も無く、冷たい風が吹き、焦土が広がる、そんな土地よ。其処で生まれて死んで行く私達の、何処が幸せなのよ!」
その言葉に、愛光は息を飲んだ。
「だから、この暖かい世界を、私達は手に入れるのよ! そうして、これから生まれて来る子供達に、暖かくて優しい環境を あげるのよ!」
(ああ……悪魔達が2界を襲うのは、それが理由だったんだ……。)
余り深く考えて来なかった。人界に戦争が絶えないように、穢れた悪魔が聖なる天使や幻獣を襲うのは、当たり前だと思っていた。
(……皆、それぞれの正義が在るんだもんね……。)
過酷な環境で生きて来たヴィルやウィロア。彼等は、生まれて来る子孫達に、自分達と同じ理不尽を、与えたくなかったのだ。だが。
「間違ってるよ!」
愛光はウィロアを睨んだ。
「他人が持っているものを羨んで、自分が持っていない事を不幸だと考えて、それを奪おうと するのは間違ってる!」
人界に居る時には気付けなかった。空界に来て、沢山の人達に出逢って、それぞれが様々な想いを抱いて、必死に未来を創っていた。けれど、他人が持っているものを奪おうと する人は居なかった。
それでも皆は、輝いていた。