予言と未来
張り掛けた結界は まだ そのままの状態で留まっているようだった。その前にヴィルが立ち、彼を中心に仲間達は倒れている。
悪の神霊の風圧が痛い。上から地面に押さえ付けられているような感覚。
「……ヴィル、様……っ。」
悪の神霊に守られている筈のウィロアでさえ、身動きが取れないようだ。彼女は古い結界に貼り付けられたままに なっている。
(……どうすれば良いの、これ……。)
起き上がれる者は居ないようだった。愛光は必死に顔を上げて、ヴィルを見つめる。
良く見れば、目元がライネスに そっくりだ。正確にはライネスがヴィルに似ていると言った方が正しいか。その綺麗な顔は、苦しそうに見えた。
――寂しい。
ライネスから伝わって来た、あの感情。それと同じ感情が、愛光の心に流れ込んで来た。
(……本当に、親子なんだね……。)
不愛想で、負けず嫌いで。でも本当は弱虫で、寂しくて。独りで生きようと、ちっぽけな力で足掻いて、間違った道を歩んでいる事に気付いても、やり直せなくて。
貴方と彼は、そっくりだね……。
誰も動けない。何も出来ない。
もしかしたら本当に、空界は悪魔に滅ぼされてしまうかも知れない。
皆が そう覚悟した その時。
「……何……これ……。」
優しい風が、仲間達の頬を、撫でた。