予言と未来
玄関から寝室へと、ライネスは まっしぐらに走って行った。
乱暴に寝室の扉を開け、ベッドの脇に立て掛けてあった剣を引っ掴むと、寝室を飛び出し、玄関とは正反対の方向へ疾走する。
其処には、1つの扉が在った。所謂 裏口と言う物だ。其処から外へ飛び出すと、木や草花しかない広い森が広がっていた。
家から少し離れた所迄 走ると、くるりと体の向きを変え、息を整える。利き手である左手で剣の柄を握り、その腕を真っ直ぐ裏口に向かって伸ばす。脇を締め、背を伸ばす。
ライネスは、怯えて逃げ出した訳ではなかった。武器を手にし、悪魔と戦う事こそが、彼の目的だったのだ。50人の悪魔から逃れる事が出来ない事も、彼は理解していた。
「!!」
裏口から飛び出して来た悪魔達は、剣を構えているライネスを見て、僅かに躊躇った。
「お前達こそ後悔するが良い。この俺を敵に回した事を!!」
ライネスの挑発的な言葉に、悪魔達は血相を変え、飛び掛かって来た。
(もう、あの頃の俺じゃない。)
攻撃を躱し、1番 近くにいた悪魔の首を一閃で打ち落としながら、ライネスは思った。
弱くて、弱くて、大罪を犯した自分が、ライネスは大嫌いだった。
泣く事しか出来なかった あの頃の弱い自分を変える為、今迄 独りで生きて来た。
(誰の力も借りなくて良い。)
独りで生きられる程 強くなれば、“あんな間違い”を犯す事も、決して無い筈だ。
軽やかに独特なステップを踏み、剣を手に舞うライネスに、悪魔は次々と倒されていく。しかし。
「……はっ……。」
倒しても倒しても次から次へと現れる悪魔。
段々 息が上がって来て、汗が顎を伝って落ちた。