予言と未来



綺麗だった黒い髪が混じった金髪は乱れ、服やズボンには土汚れが沢山 付いている。左手に握られている剣は、その輝きが見えなくなる程 真っ赤に染められ、それを握っている手や袖も、血で ぐっしょりと濡れていた。



リホに名を呼ばれたライネスは、ゆっくりと此方を振り返った。



「っ!!」



以前 会った時とは大分 違う表情に、愛光達は目を瞠った。



奥に熱い焔を宿していた紅い瞳に、光や光彩は無かった。



彼の頭の右側から血が流れ、顎から鮮血が滴っているのを見て、リホが走り寄る。



「ライネス! 怪我してる!」



手を伸ばすリホの手を、ライネスは振り払った。



「……え。」



戸惑うリホと、相変わらず無表情なライネス。



「ライネス? どうしたの? 早く手当しないと――。」



「良い。」



リホの言葉を、ライネスは遮った。そして、ふらふらと家に向かって歩き出す。



「ラ、ライネスってば!」



その後を追うリホに、ライネスは全く目を向けない。



彼が愛光達の脇を擦り抜けようと した瞬間。



「…………!」



愛光は、彼の腕を引っ掴んだ。

< 71 / 258 >

この作品をシェア

pagetop