夏風邪とモノグラムな指
掴んだ哲の指があたしの指と絡み合い、哲は反対の手であたしの額を再び撫でた。


汗が哲の指に纏わり付いていることに気づいたとき、あたしは急に恥ずかしくなった。


こんなことを考えてしまうのは熱のせいってことにしておくけど。


普段は絶対に考えないってことにしとくけど。


あたしが今、哲を独占しているのだと。


目の前の男をあたしは、今だけ自分のものにしているのだと。


そう思ったら、すごく恥ずかしくなった。


恥ずかしいと思うことはその自覚があるということで。


少なくとも嫌とは思っていないということで。


絡み合った指と額に触れている手。


どちらも失いたくないと思った。


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