夏風邪とモノグラムな指
や、やばい。


哲の色気と熱のせいで頭がおかしくなっているのだと信じたい。


中指が哲の唇をなぞる。


指が小刻みに震える。心臓がドクドクと鼓動を立てている。


──触れたい。


あたしの唇で、この男の唇を塞ぎたい。


普段だったらこんなことは思わないことを切に願う。


あたしの左手が哲の右手に掴まれる。


眼鏡の奥の瞳に、あたしが写っていた。


「ごめん、なさい……」


やってしまった……。


わかっている。哲は決してあたしと同じ気持ちではないことは。


こんなことをされて、哲は決して嬉しくないことは。


あたしがしたかっただけだ。


わかっていても、止められなかった。


最低、だよな。


……怒ってるかな。


その時、あたしの両手が顔の横に押し付けられた。


ギシッとベッドのスプリングが音を立てていた。


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