恋愛は他人を中心に廻っているらしい
 
 はたから見たら、ドアの前で、男が男の名前を呼んで、『どうして!』と、叫んでいる。
 
 外から見たら、ドアの中には、その裕也という名前の男がいて、その男の名をよんでいるかのように。

 けれど、まちがってはいけない。

 扉のなかには、れっきとした女である、自分しかいない。

 名前も本庄雪花というりっぱな名前で、断じて裕也などではない。

「どうしてっ!!!俺は捨てられたんだ!!」

「しらねーよ!」

 はっきり言おう。迷惑だ。

 高級マンションで、防音もしっかりしているし、隣との感覚が、結構あるから、あんまりまわりに響かないのでいいものを。

 こんなところを人に見られてみろ、変な噂がたつに決まっている。

 しかも、なんだか、自分がこの男を捨てたように見えるじゃないか!
 
 心底、迷惑だ。

 しかも、ちょっと叫んだ内容をスルーしたが、男の名前を、この酔っ払い男が叫んでいる。

『裕也』って、男の名前だろう?
 
 別に偏見とかないよ?
 
 自分に迷惑がかからないなら。

 そう、迷惑がかからないならね。

 人の恋愛など、どうでもいいし。

「まったく。
 あんたどういうつもりだよ。
 人の迷惑、考えろってんだ。
 第一、裕也ってだれだよ」

「大木裕也二十三歳男性。
 身長170センチ56キロ。
 痩せ型ほどよく筋肉があり。
 顔は童顔、笑った顔が、かわいい。
 怒っても可愛い。
 泣いていてたら、もっと泣かせたくなる。
 好きなものは苺。 
 桃。さくらんぼ。
 甘いものが大好きで、嫌いな物は、にがうり、辛いもの全般。
 なにそれかわいい。裕也」

「ちょっと、まてや、おら。
 んなこと言っても、しらねーよ。
 てか、しりたくねーよ。
 マジで。
 そいつ、だれだよ。
 裕也って、大木裕也なんて私・・・・」

 あれ、何かひっかかる・・・・?

 何かきいたことが・・・ある?。

 
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