恋愛は他人を中心に廻っているらしい
 まあ、しょうがないかと、あきらめのような、ため息を吐く。 

 そこには、今にも崩れおちそうなほど、弱り果てた男がいた。

「俺は、裕也の最初の相手だ」

 何の最初の相手だよ。っといいたいが、あえて、スルーする。

 分かるよそのくらい。
 
 だって、おとなだし。

「何もわかっていない、裕也を好きになった。
 裕也はちゃんと俺を好きになってくれた。
 けれど、それが、本当の恋なのか愛なのか、本当は、裕也は分っていなかった。 
 だから、それに俺はつけこんで、すりこみのようにしたんだ。
 確かに、好きになって愛してもくれた。
 けれど、それ以上の人を見つけたんだ・・・・」

 それって、本当には、裕也は愛していなかったって、自分で言っているようなもんではないのだろうか。

 まあ、真実なんて本人しかわかりはしないけれど。

 いや、本人でも分からない事はいっぱいある。

「俺に・・・、沙希を愛しているんだって、一番に守って一生大事にしたいって・・・。
 言ったんだ・・・。
 沙希も、
『お兄様ごめんなさい。
 けれど、私、裕也を誰よりも愛しているの・・・。
 だから、お兄様にも、裕也は譲れないわ』
 そういいながら真剣に・・・。
 裕也も
『おれ、ちゃんとあんたを愛していた。 
 けど、今はだれよりも、沙希を愛している』
 そう、言われてしまった」

 心に刺さるようなそのことばが、この男の心を貫いたのだろうということは、理解できた。

 納得しようと、諦めようと・・・。

 思わず、深く溜息をつき、ここで、こんなおせっかいなど自分はしなくてもいいとは思ったものの、それもできずに、雪花は

「ほら、まったく、ココアでも入れてやるから、家に入りなさい」

 そういって、軽く慰めるように肩を叩いて、家に入っていく。

 お人よしもいい所だろうと、自分で、自分に苦笑いする。

「っつ!!」

 後ろから微かに、啜り泣く声を我慢している音が聞こえた。

 雪花はそんな音を耳のはしにとらえながら、前を向いて、進んでいると、後ろからの軽い衝撃。

「は?」

 
< 6 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop