透叫
「なるほど…。倦怠期ですかね?」
「オリシャ」
さも面白そうに言うオリシャに、軽い叱りの一瞥をくれて、イザヤは立ち上がった。
優しく降り注ぐ陽の光に、白いローブが薄く黄色に染まる。
「世界を救う方法など、考えるだけ無駄なのだろうか」
独り言のつもりだった言葉に、オリシャは反応した。
「箱庭は壊れる定めです。逃れる術はありませんよ」
長く生き続けている世界はある。
だがそれすらもいつかは砕かれてしまう。破壊の神によって。
「解っているさ。それが仕事だってこともな…」
どこか寂しげに呟くその姿は、普段からは見ることのないイザヤだった。
そんなイザヤを見たオリシャは自分の言葉を後悔し、そして同時に言い表せない感情を抱いた。
人間に近づいてきている。
僅かながらも、確実に。
どこか愉快で、その変化を見るのがオリシャの楽しみでもあった。
「イザヤ様。部屋へ戻らなくてよいのですか?」
「ああ。一緒に行くか」
イザヤがそう言い、オリシャはイザヤの後に続いてイザトがいる部屋へ向かった。