透叫

幻覚でないことが分かって一安心したのも束の間、なぜこんな所にポストがあるのかと疑問が浮かぶ。

「ん?願叫の箱?」

正面に書いてある文字が暗いのに、光っているようにくっきり見える。
その文字を読み終え、四黒は嘲笑した。
誰かのいたずらか?
ああ、あのナースだな。
俺を驚かせようとこんなものを用意して、わざわざ別室へ呼んだのか。
四黒は自分の考えに確信を持ち、待ち合わせの病室へと向かった。

「君だろう?あんな物を置いたのは」

病室に着いてナースと他愛無い会話をしつつ、部屋に鍵をかける。
四黒がさっき見たポストの話をすると、ベッドに腰掛けていたナースが不思議な顔をした。

「あんな物って?」

四黒は笑いながらベッドに上がり、ナースを後ろから抱きしめた。
そして耳元でわざと吐息がかかるように囁く。

「俺を驚かせる為にわざわざ用意したのか?あの黒いポスト」

ナースはくすぐったそうに身をよじるが、四黒の話に思い当たる節はない。
なんのことかと考えているうちに、男のごつごつした手が服越しに胸を揉んでくる。

「黒いポストなんて…しらない…っ」

そう言ったナースの言葉に、四黒の手は動きを止めた。

「知らない?君じゃないのか。じゃあ一体誰が…」

考え込み始めた四黒にはもはやナースのことなど頭になかった。
一向に動く気配のしない四黒に、ナースは痺れを切らしたように立ち上がり、ボタンを外して前をくつろげ、四黒に向かい合う形でベッドに上がった。

「ねえ高時さん。そんなことより、もっと触っていいのよ…?」

四黒の太ももに手をつき、谷間を見せるようにして上目遣いに言ってみるが、本人は全く上の空だ。
その様子を見て苛立ったナースは、もう知らないんだから!と呟いて服を直し始めた。

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