透叫


四黒店長が入院している総合病院は、裏庭が広いことで知れていた。

庭の手入れにはとことんこだわっており、患者の心を和ませるのに大いに役立っている。

季節に合わせた花道が一番人気で、上階から見ると毎回異なる花の模様が見えるため、外に出れない患者にも十分楽しめた。

表の駐車場に車を停めた高宮は受け付けで店長の病室を聞き、見舞いの品にと買ったフルーツの盛り合わせを持って病室へ向かった。

個室の507号室の前まで来て名札を確認し、ノックをする。

「はい。どうぞ」

中から店長らしき男性の声が聞こえ、高宮はそっとドアを左にスライドさせた。

「失礼します」

そう言って病室へ入ってきた高宮を見て、四黒は怪訝な顔をした。

見知らぬ男だ。
誰か来るなんてことも聞いていない。

明らかに不信者を見る目で見る四黒に、高宮は挨拶をする。

「はじめまして。高宮白と言います。何の連絡もなしに来てしまってすみません。これ、お見舞いです」

フルーツの盛り合わせを手渡し、高宮は近くにあった丸いパイプ椅子に、失礼しますと四黒へ声をかけてから座った。

四黒はまだ不信な目でフルーツと高宮を交互に見ながら口を開く。

「高宮白?聞いた事ない名前だが、君は何者だ?」

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。僕は四黒店長の代理として、お店で1ヶ月前から働いています」

四黒の質問に答え、高宮は深々と頭を下げた。


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