淡く儚い月に見守られ
「ごめんなさい畑中さん。でもお願い、遥翔さんが近くにいてくれると思うと安心できるの、もうあんな怖い思いしたくないの」

「だからって常に遥翔が近くにいる訳じゃないのよ、仕事で連絡取れない時もあるしツアーに出て何日も家を空ける時だってあるの」

「それでもいいです、少しでも近くにいてくれるなら」

「仕方ないわね、それじゃあ一つだけ条件を付けるわ」

「なんですか条件て」

「簡単な事よ、もしマスコミに嗅ぎつけられるような事があったらどちらかがすぐにマンションを出て頂戴」

畑中の出した条件に杏奈は納得する事が出来なかった。

「そんなの嫌です、どうして離ればなれにならないといけないんですか」

「あなたたちの関係がマスコミにばれたらどうなると思っているの、どちらかがマンションを離れたからと言って疑いの目は消えないかもしれないけど、でも同じマンションに住んでいるよりはましよ」

「でも……」

それでも納得しない杏奈に対し更に説得する畑中。

「お願い杏奈、芸能人にとって恋愛スキャンダルは致命傷なの。それはあなただけじゃないわ、遥翔にとっても同じ事が言えるのよ」

「分かりました、仕方ないですね」

こうして条件付きではあるが畑中の許しを得た杏奈は、数日後新居である遥翔の住むマンションへと引っ越してきた。
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