淡く儚い月に見守られ
第九章『再びの密会』
引っ越し作業を全て済ませたころ杏奈が事務所の地下にあるレッスンルームでレッスンをしていると、そこにマネージャーの畑中が大きなニュースを手土産に飛び込んできた。

「杏奈やったわよ、ＣＭの仕事が決まったわ」

「ほんとですか？　うれしい」

「えぇほんとよ、先方がぜひあなたをイメージキャラクターとして起用したいって、商品のイメージにぴったりだそうよ。このＣＭでさらに知名度を上げればまた一段とブレイクするきっかけが出来るわ。あなた運がいいんじゃない？　なかなか駆け出しのタレントにこんなに次々と仕事が舞い込む事ないわよ」

一度は喜びの表情を見せたものの、その後杏奈は不安な表情をのぞかせた。

「でもＣＭと言っても少し位は演技力ないとダメですよね、あたしに出来るかな？」

「何言っているの、心配しないで大丈夫よ。そんな事言っていたら何もできないわよ、それに何事もみんな初めての時があるんだから」

「そうですよね、あたし頑張ってみます」

「そうよそのいき」

その後杏奈はこの喜びを今最も伝えたい人物にメールで伝えた。
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