淡く儚い月に見守られ

『二人の接近』

探偵事務所を後にした亜梨紗は人目の付かない路地裏に入るとすぐに哲弥のケータイに電話をかけた。

その声はひどく興奮し声を荒らげながらのものだった。

「ちょっとどうなっているのよ、あんたがもたもたしているからあの女が遥翔と同じマンションに引っ越しちゃったじゃない、一体どうしてくれんのよ！」

亜梨紗のものすごい剣幕に哲弥は戸惑ってしまう。

「そんな事言ったって充分怖がらせろって言ったのはそっちだろ！」

「もういい、言い訳するんじゃない！　分かっていると思うけど金はやらないからね」

「待ってくれ、もう一度チャンスをくれよ」

「分かった、だったら二人の行動を探って。でもこれが最後よ、今度失敗したらどうなるか分かっているわよね」

「分かったよ、とにかくやってみる。チャンスをくれてありがとう」

その頃初のＣＭ撮影に挑んだ杏奈であったが、やはり当初の予想通り演技にかなりてこずっていた。

ところが撮影が進むにつれ杏奈は自分でも気付いていなかった演技の才能を発揮する事になる。

無事に撮影を終えた杏奈はその夜家に帰ると遥翔に早速この日の報告をする。
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