淡く儚い月に見守られ
「どうしたの杏奈ちゃん、今までは僕よりも杏奈ちゃんの方が慎重だったじゃない。それが今では杏奈ちゃんの方が大胆になっちゃって」

「良いじゃないですか、あたしが遥翔さんにご馳走したいんですから」

「分かったよ、確かに見つからなければ良いんだよな。僕も杏奈ちゃんの手料理食べたいし明日お邪魔しようか？　どんな料理食べられるんだろう、楽しみだな」

「それは明日になってからのお楽しみ、楽しみに待っていてくださいね」

翌朝早く起きた杏奈は急いで部屋の掃除をするとスーパーに行きいつもより多めに食材を買い、家に帰ると早速準備に取り掛かる杏奈。

料理は島にいる頃から母親の手伝い等で良く作っており上京してからも出来る限り自炊していたのでお手のものだったが、杏奈にとってこれ程楽しい料理は初めてだった。

暫くすると杏奈のスマートフォンが鳴り遥翔からのラインの着信を知らせた。

『杏奈ちゃん今仕事終わったよ、これから帰るからね』

（遥翔さんからだ、お仕事終わったんだぁ、返事返さないと……）

ウキウキ気分でラインを返信する杏奈。

『はい待っています、気を付けて帰ってきてくださいね』

その後料理が出来上がり遥翔の帰りをそわそわしながら待っていると、玄関のチャイムが鳴り響いた。
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