淡く儚い月に見守られ
「はーい、今開けまぁす」

嬉しそうに勢いよくドアを開ける杏奈。

「おかえりなさい遥翔さん、お仕事お疲れさま」

「ただいま杏奈ちゃん」

「遥翔さんおかえりなさい、ご飯出来ていますよ」

「そうか、じゃあ早速食べたいな」

 この時杏奈は、玄関を上がる遥翔のわずかな異変に気が付いた。

「どうしたんですか遥翔さん、なんだか足引きずっていません?」

「ちょっと足が痛くてな、もうずいぶん経つんだけどなかなか良くならないんだ」

「マネージャーさんとか何も言わないの?」

「仕事場では我慢してなんともないふりをしているからな」

「どうしてそんなことしてるの、病院には行っているんだよね?」

「そんなの行ってないよ、大丈夫だよそのうち治るから」

(遥翔さんたらそんなこと言って、病院に行ったほうが治るのも早いのに)

「良いから早く病院に行ってみてもらって、そうしたほうが治るのも早いでしょ!」

「分かったよ、そのうち行くから。それより腹ペコなんだ早く杏奈の手料理食べたいな」
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