淡く儚い月に見守られ
「分かったわしょうがないな、ちょっと待ってくださいね、今用意しますから」

「僕も手伝うよ」

「良いですよ、遥翔さんは座って待っていてください、お客さんなんですから」

杏奈は自慢の手料理を次々とテーブルに並べていく、それはまるで新婚夫婦の若奥さんの様にウキウキしていた。

その後杏奈は全ての料理をテーブルに並べ終えると自らも遥翔の向かいに座る。

「さあ準備できました、どうぞ食べてください。庶民的な料理しかないですけど……」

「何言っているの、こういうのが良いんだよ。うまそうだなぁ、いただきます」

「ごめんなさいね、招待しておいて申し訳ないですけどうちにはこの小さなガラステーブルしかないの。ほんと狭いですよね」

「何言っているの、大丈夫気にしないから。それに狭いからと言ってご飯がまずくなるなんて事ないんだから。杏奈ちゃんも気にしなくて良いからね」

「ありがとうございます」

その後遥翔は一口食べると想像以上の味に感激した。

それは家族のいない遥翔にとって久しぶりに味わう家庭の味であり、この上ない幸せのように感じられた。
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